CHIONOECETES -2-

 前回の更新から日が空いてしまいましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。本バンドでドラムを担当している川崎です。


 これまで録音やMIX作業などCD音源の制作活動を進めてきて、上野でのライブ、CDリリース、そして新たなプロジェクトに向けた始動など、バンドとしての活動が本格的にはじまった感があります。


 振り返ると話せる内容もなくはないですが、それはさておき今回も漫画の話をします。僕にできることはそれくらいしかないので……




 今回ご紹介するのはこちら

ちると 著 『とっても優しいあまえちゃん!』

 現在、コミックスは①〜③巻まで発売、ドラドラドラゴンエイジにて連載中。ニコニコ静画ですが、以下リンク先にて無料掲載分を読むことができます。

 公式紹介文として、以下のようなものがあるので引用します。

“『隣の巨乳JSに思う存分甘えちゃえ!? 母性たっぷりラブコメディ❤️』”

“『私にいーっぱい甘えてね♪巨乳JSに思う存分甘えちゃう新感覚バブコメディ 人気作家を目指しているけど、全然うまくいかない僕の家の隣に住んでいる巨乳JSのあまえちゃんは、とっても優しい! こんな僕をいっぱい褒めてくれるし、思う存分甘えさせてくれる! あまえちゃん、好き~~~!』”


………………


 この作品、みなさんはご存知でしょうか?

 いまご覧頂いた少ない情報からも既にお察しいただけるかと思いますが、この作品をこの場で紹介することは僕にとってなにひとつメリットがありません。ですが、面白いので仕方ないです。強行します。


 パッと見て「無理。」と思われた方におかれましては、マジでそのままの作品内容なんで、悲劇の起こらぬ今のうちにブラウザバックおよびタスクキルの方、よろしくお願いいたします。




 …それでは、残ってくださった物好きの皆さんに、この作品の内容について紹介をしていきたいと思います。




 この作品において主な登場人物は、漫画家を志しながらもうだつの上がらない日々を送る ”お兄さん” とその近所に住んでこれを甘やかしまくる女子小学生の”あまえちゃん” とのふたりになります。このふたりの交流が主軸として作品に描かれます。

(ちると『とっても優しいあまえちゃん!』3巻 29話、KADOKAWA 2018/04/09初版 より)


 成人男性が逆上がりの練習をするという29話を例にして、この作品がとる形式や可笑しさについて簡略的に紹介します。


 ちなみに、この作品において「お前はいったい何をやっているんだ」という類のツッコミは一切が無駄となりますので、あらかじめご了承ください。

 逆上がりができず、小学生たちにバカにされてしまいショックを受けるお兄さん。そんな情けないお兄さんでもあまえちゃんは一切責めることなくかばい、盲目なまでに親身になってこれを応援します。

 そんな優しいあまえちゃんがそばにいてくれるから、お兄さんは自分を投げ出さずに立ち上がって、問題へと立ち向かう。はたから見るとふたりは歪な関係かもしれませんが、非常に感動的なシーンです。

 そうして頑張ったご褒美として、女子小学生の胸に全身で甘えるダメな成人男性の姿と「あまえちゃん 好き〜〜〜〜〜〜!!」のその咆哮とともにお話は閉じられます。


 本作品における話のおおまかな構成としてはこのような形式をとります。抽出して軽くまとめると


・お兄さんが何らかの問題に直面し、これに挑戦するが、社会的な要因や己の無力さ、不能から挫折を痛感する。

→「とてもかなしい」

・それでもあまえちゃんはいつもそばにいてくれて、どんなにダメな“僕”でさえも許容して、癒してくれる。

→「あまえちゃんすき〜〜〜〜!!!」── HAPPY END…


 本作品が持つこの形式の強固さというところではコロコロコミックに掲載されているギャグ漫画のようなテンプレートのおもしろさもありますが(ごめんなさい小学館)、滑稽であるのに物語全体からどこか不条理と悲哀とが感じられつつ、それでいて爆発的に笑えるというのがとにかくすごい。登場人物のお兄さんは幸せなはずなのに、読者は読んでいて幸せな気分にはなりえない。(個人の感想です)


 カミュは「不条理なるがゆえにいっそうよく生きられる」との言葉をのこしたそうですが、はたしてお兄さんの在り方を“善い”と断言してしまってもよいのだろうか。


 今回紹介したエピソードはお兄さんにとっての成功体験のお話ですが、数あるエピソードにおいて、お兄さんが抱いた“かなしい”という感情が、問題についての解決を何も得られないままに、“でもあまえちゃんがすき”という楽の感情へと変換される構成もこの作品では多く見受けられます。二人の閉じた関係性とそういう異様さこそが、この作品が有している魔性だと思う。この不条理がすごい! 2018


 この作品を強いて一言で表現するならば、不条理ギャグ漫画として非常におもしろいということを強く推します。実際、読むと心から声出して笑ってしまう。


 真っ当に褒めておくと、物語はおおよそが単話による完結形式で、どこからでも読みやすいのも良いですが、お兄さんのそのすべての言動が、“やがてあまえる”という行為に集約される話の構成力は目を見張るものがあります。


 僕がこの作品に出会ってはじめに抱いた印象は 完全に狂ってしまった『NHKにようこそ!』また、ニコニコ静画でみかけた「滝本竜彦ともつ飴のキメラ」というコメントには腹を抱えて笑いました。


 まあそれはいいとして、

 人生ゲームにおいてふたりで遊ぶ第22話にて、あまえちゃんは借金だらけのお兄さんの車に自分のコマを無理やり移して結婚を迫りこのようなことを言い放つ場面があります。


“「おにーさんの苦しみをはんぶんこするのが 私の望んだ幸せなんだ♡」”


 ダメな大人を全肯定してくれる深淵のようなあまえちゃんの底知れなさがうかがえる。

 この作品において一番の狂人は言うまでもなくあまえちゃん自身なんですが、ダメダメなお兄さんもそんなあまえちゃんの存在というおかげもあり、完成させた漫画をウェブで公開するなど、少しずつではありますが前進して作中で成長を遂げています。泣ける。




 ここまでこの作品の内容がもつ魅力についてお伝えしてきましたが、ちゃんと伝わってますか? 大丈夫ですか?


まあこの文章書いてる僕自身、頭がいたくていたくて理解不能だろうがしょうがないとも思うので、僕がこの作品周りから感じた魅力についてこのままガンガン書いていきます……


 ここまでこの文章を読んでくださっている方々にとっては、著者近影が哺乳瓶なのとかももう今更という感じで特段驚きもないかとは思いますが、この画像は①巻の表紙折り返し、著者挨拶文です。


"後先考えずに夢をぎゅうぎゅう詰めにしたこの漫画"

"僕の「好き」が詰まっているので 是非読んで下さい! "


 その夢の内容がどうというのはさておき、これは創作者と創作物の関係として言っていることは理解できます。あまえちゃんというキャラクターの存在が著者自身好きで好きでしょうがないんだろうなーというのも作品から伝わります。


 しかし、是非ご覧いただきたいのは、著者のSNSでの発言、質問箱への返答。

「あまえちゃんは妄想?」という問いに対して著者はこう答えます。

(https://peing.net/ja/q/7c80ff84-49a3-4404-9bb0-c1448f1fde48?v=1 より)


“漫画なので20%くらい脚色していますが、あとは体験談です。”



嘘をつくな。


 「こんなものが80%でも真実であってたまるか」と失礼ながら著者の統合の失調さえ疑いましたが、ほかの質問への返答や対応などは至極真っ当で、それでありながら

“あまえちゃんはいます”

と力強く断言する様子などが確認されました。


 そして、僕はこれらの情報を統合し、実体をもたないが確かにそこに在るもの、純粋な願いの結晶、それが“あまえちゃん”という存在なのだなと理解し、畏敬の念をもってこの作品を拝読するようになりました。みなさんはどうですか? あまえちゃんはそこにいますか?




 イかれたスケルツォを延々と奏でているような非常にクールなこの作品ですが、一応、ふたりの関係性を冷めた目で見るような一般常識を持ち合わせたキャラクターも登場します。そういう点では、この作者にも自己批判的な視点が少しはあったのだなとちょっぴり安心します。


まあその一番の常識人というのは犬なんですが。


 

 最後に、この作品で僕が一番大好きなところを紹介して終わりにしたいと思います。


 僕がこの作品で一番好きで好きでしょうがないのは、単行本巻末に掲載されている狂った謝辞です。

 思い出して欲しいことは、あまえちゃんが女子小学生であるということ。


 そのあまえちゃんのお胸に全身を使ってめいっぱい甘える倫理観ゼロの成人男性の輪郭をもった影に、現実で実際にお世話になった方々の名を刻み込む……


 ここまでくるともう何がどうなっているのかさっぱりわからず、だんだんと意味不明な笑いが込み上げてきます。たぶんこの先生、本当に天才なんだと思う。




 この作品のことが好きすぎて、長くなってしまいましたが、以上で『とっても優しいあまえちゃん!』の紹介について終わりにしたいと思います。これなんのブログですか?


 最後まで読んでくださった方は、本当にありがとうございました。ぜひ、この作品を手に取っていただくか、無料掲載分でも読んでいただければ、なお幸いに思います。


 CDの宣伝等は他のメンバーがちゃんとやってくれると思うので、甘えます。


 以上、ドラム担当の川崎でした。

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